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始されたCOMWEB (COMparative analysis of food WEBs on flow networks)もその一つで、Olsen教授はそのコーディネーターを務めておられる。このプログラムには、ノルウェーのほかフィンランド、ドイツ、ベルギーとスペインが参加しており、ノルウェー沿岸、バルト海、北海、地中海など栄養レベルの異なる生態系の構造や機能の比較を目的としてそれぞれの海域でメソコズム(プラスチックバッグやタンクなど、海中に設置して現場の生態系の変化の様子を実験的に調べるための装置、図12に一例を示す)を用いた研究が行われている。また生態系のモデリングも並行して進められており、海域間の比較によって共通のモデルを検証しながら栄養レベルの変化の生態系への影響の定量化を行い、将来の変化予測を可能にしていくことが計画されている。このほかEUには、FAPPE (Fertilization And Pelagic Production Efficiency)という栄養添加のプランクトン生態系への影響に焦点を合わせた実験のプログラムを申請中であり、そのパイロット研究として1996年から3年計画でNAPP (Nutrients And Pelagic marine Production) が活動を始めている。そこでは主に、植物プランクトンの個体群動態や環境変化への対応の生理学的な側面に焦点を合わせた基礎研究が行われている。

3.5 ノルウェー理工大学水理環境工学科

面談したMcClimans教授は、現在、ノルウェーとロシアの国境付近に位置するカラ海に投棄されている放射性廃棄物やカラ海に流入する汚染物質の移動・拡散機構(図13)を調べるための水理実験に従事しておられる。これまでの実験結果では、カラ海から直接ノルウェーの方に移動・拡散する可能性は低いようであるが、結氷時に水中あるいは大気から海氷に封じ込められ、海流によりバレンツ海に輸送されるものについてはさらに検討を要する。かつて1世紀前にナンセンは、天然起源の鉱物粒子や生物粒子に原因する"dirty ice" を北極海で観測したと伝えられているが、それは図らずも今日の人為汚染物質の海氷による長距離輸送を予言するものとなったわけである。汚染物質を含んだ海氷が集中的に融け出すのは生物生産の高い海氷と北大西洋海流系の暖水のフロント域と考えられることから(図10参照)、食物網を介しての生態系への影響が懸念されている。フロント域に近いスバルバード諸島周辺の北極グマや海鳥から高濃度のPCBsやPAHsが検出されていることもその懸念を強める要因となっている。

3.6 ノルウェー理工大学生物工学科

まずMyklestad教授とB♀rsheim博士から、海洋における炭素の循環・収支に対して溶存

 

 

 

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